ユニクロ社会事業の布石
このユニクロのチャレンジは社会事業の一つとして重要な意義があるように思います。全世界で貧困層40億人と言われていますが、全人口65億人として地球上の約6割の人がこの中に含まれることになります。この層の人々が通常の生活環境を確保できるようになればテロや治安悪化などの問題が大きく減少するように思います。経済の語源が世を治め苦しみを救う「経世済民」という社会事業の観点からも是非とも成功してもらいたいと思いますね。
貧困層40億人開拓へ一歩
カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、バングラデュで貧困向けの融資を手掛けるグラミン銀行と提携した。今秋、同国で衣料を製造・販売する新会社を設立する。1着平均1ドル(約88円)のTシャツや下着など貧困層向けに販売する計画だ。
「その国にとって良い企業でなければ、その国で生き残れない」。記者会見で柳井正会長兼社長がこう述べたように、事業はソーシャルビジネス(社会事業)。バングラデシュは世界最貧民国の一つで、貧困や衛生、教育などの社会的課題を抱えている。
同国の主要産業は縫製業で、近年は賃金上昇の著しい中国に続く製造拠点としてファストリなど先進国企業向けの衣料生産が増えている。途上国で商品の生産を委託するグローバル企業は「低賃金で過酷な労働を強いている」と批判されることもあり、企業の社会的責任を問われる。
そこでグラミン銀行と組んで貧困層向けの衣料品を企画し、現地工場で生産、販売することにした。グラミン銀行と同行のムハマド・ユヌス総裁は小額融資で農村女性を助ける活動が評価され、2006年にノーベル平和賞を受賞。ユヌス総裁は「ユニクロとの新事業は服がなくて学校に行けない子どもや冬の防寒着などの不足に悩む人々を助ける」と期待する。
新会社は収益を配当に回さず再投資して雇用を創出、3年後に現地雇用を1500人に増やす考えだ。
だが、ファストリは企業イメージの向上だけを考えているのではない。同社は2020年に連結売上高を2009年8月期比7.3倍の5兆円に拡大し、うち4兆円を海外で販売する野心的な計画を掲げる。ただ、当面顧客の主な対象は新興国の中流層まで。年間所得3000ドル(約27万円)以下の貧困層はほとんど対象外だ。
だが、貧困層の人口は世界で40億人。バングラデシュだけで1億5000万人を超す。貧困層の社会的課題が改善されて経済成長が進む時、潜在市場の開花は大きい。「服を変え、世界を変える」を目指すファストリにとって貧困層市場の開拓は長期的に重要なテーマなのだ。
その際、グラミン銀行が小額融資によって村々の主婦層に広げた人脈は有力な販売網となる。流通網が未整備のバングラデシュでは販売員が農村の家屋を訪問し、対面で販売するしかない。自力で築くには多大の時間とコストがかかる。
一方で農村の主婦には雇用の場が確保され、所得水準の向上に伴い、ユニクロの市場も拡大していく。「バングラデシュで確立したビジネスモデルは世界に広げることができる」。こう語る柳井社長は次の候補地としてベトナムやカンボジアを考えている。
既にフランスのダノンがバングラデシュでグラミン銀行と組み、安いヨーグルトを製造・販売して成果を出すなど40億人市場に乗り出す国際企業は相次ぐ。
経済の語源は世を治め、苦しみを救うという「経世済民」で、社会事業の意味合いを含んでいる。そこに視点を定めた企業が長期的に幅広い顧客を獲得する。先進国や新興国だけが市場ではない。(日経 7/19)
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