継げるか咸臨丸の志

2010 年 11 月 21 日 今井 明徳

 

シリコンバレーは世界一のベンチャーを育てて新規ビジネスを世界レベルにまで引っ張る経営者や学者の生産の谷ですね。そこにスタンフォード大学があり、この大学出身者が多いのも文化なのかもしれないですね。

ステーブ・ジョブズ氏(米アップル社CEO)のスタンフォード大学の2005年の卒業式で卒業生へのスピーチがあったので載せてみましたい。勇気を持ってこれからを切り開けると思います。http://ceo.johobuilders.co.jp/blog/apple_jobs

継げるか咸臨丸(かいりんまる)の志

米国に留学する日本人が激減している。1997年の4万7千人をピークに今や3万人を切る水準だ。商社でも若手が海外勤務を望まないと嘆き節がきかれ、長引く景気低迷や少子化と相まって「内向き」志向は危機にひんする日本を象徴するキーワードの一つとなった感がある。

だが、世界は違う。

10月5日、米シリコンバレーにあるスタンフォード大学。その一角で米半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)が寄付した施設の完成記念討論会が開かれた。居並ぶ企業家や学者を見回したジョン・ヘネシー学長は「米国生まれは僕だけだね。これがスタンフォードだ」と語り始め、笑いを誘った。

ファンCEOは台湾生まれ。壇上にはインターネット検索大手ヤフーの共同創業者、ジェリー・ヤン氏もいた。同氏も台湾生まれで、10歳で米国に移住した際には英語が全く話せなかったという。スタンフォード大在学中にヤフーを共同設立した。

ネット検索でヤフーをしのぎ、尖閣諸島沖の中国漁船衝突の映像流出で話題のユーチューブを運営するグーグルもスタンフォード在学中の2人が創業した。その1人、セルゲイ・ブリン氏はモスクワ生まれ。旧ソ連から自由と機会を求めて移住したユダヤ系ロシア人家庭の出身だ。

スタンフォード大に限らず、シリコンバレーには米国生まれでない経営者やエンジニア、研究者がひしめき合う。共通しているのはビジネスやアカデミズムの舞台で世界を相手に戦い続けていることだ。特に、中国や韓国、インドなどからは国の代表選手のような俊英が集まる。

「日本にいると、学費や入学条件、卒業後の進路など留学を具体的に検討する情報が少なすぎる」。スタンフォード大医学部の博士課程で学ぶ見本人留学生が少ない理由を説明する。米国は学費が年々上昇、生活費も考えると、総費用はサラリーマンの平均年収を軽く超える。親に頼るわけにもいかず、ためらう学生が増えるのはうなずける。

しかし、アジアなどの必ずしも裕福でない家庭の子どもが官民のあらゆる奨学金制度を活用して米国で勉学に励んでいるのも事実。彼らの挑戦が将来母国の活力となるのは間違いない。

日本では、幕末から明治時代にかけて、さらには戦後の復興期に多くの優秀な若者が海を渡った。自らの可能性を試し、日本の新しい時代を切り開いていった。

今年は咸臨丸(かいりんまる)が太平洋を横断して150年。サンフランシスコでは様々な記念行事が催され、咸臨丸乗組員の子孫も出席した。勝海舟ら幕末の志士たちは偶然に輩出されたわけではない。誰かに見いだされ、学ぶ機会があったからだ。

今年のノーベル化学賞受賞が決まった日本人学者2人は米国での研究が評価につながった。咸臨丸の志は脈々と受け継がれている。それを途切らせないため若者にどう機会をあたえるのか。戦略が日本に問われている。(日経 11/18)

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