世界で勝ち残るには(2)
2日間の連載で「世界で勝ち残るには」の2日目で日本企業のグローバル化取り組みへの助言となります。昨日はグローバル化の成功方法とその例を挙げましたが、今日の話題は日本企業においての弱点とグローバル化への取り組みに関する話題です。真のグローバル化にはまだまだ時間が必要なようですが、悟り(SATORI)というキーワードで覚えておくことで今後の活動に意識して対応できるように思います。
世界で勝ち残るには(2) 文化の壁「悟り」で破る
日本企業のグローバル化が加速している。多彩な新興国が成長をけん引する世界経済のなかで、国境を越えたビジネスを成功させるには何が求められるのか。経営戦略の世界的権威として知られ、「コークの味は国ごとに違うべきか」など著作によって各国企業のグローバル戦略に一石を投じてきたパンカジ・ゲマワットに聞いた。
Q.日本企業による海外企業の買収が増えている。注意すべきことは何か。
「バブル期の買収ブームから学ぶことは多い。まず値段。カネ余りの時に買収すると買収価格が上がり、採算がとれなくなりやすい。今でも中国企業が海外企業の買収で異常な規模の資金を投じている。1990年までの日本と同じ病にかかっているかのようだ。」
「買収後、企業価値を創造する計画が明確であることが欠かせない。買収後の企業価値が、2社の価値の合計を超えていく展望がないと、買収価格が高い分、失敗の可能性が高まる」
Q.海外企業を買収する場合、文化の壁を乗り越える必要がある。人事制度の見直し。
「国際的なM&A(合併・買収)が抱える最大の試練だ。なかでも買収後の人材の融和は難しい。日本企業の課題を並べると、頭文が『SATORI(悟り)』という素晴らしい日本語になる」
「SはShift(転換)。まずは視点をがらりと変える必要がある。企業は国内だけでなく海外、それも新興国を向いて経営をすべき時代に入る。経営トップだけでなく、社員全体にこの認識が浸透することこそが、外国企業と融和するための第一歩だ」
「AはAdaptation(適応)。買収後は海外の人事制度を現地の事情に合わせて変えることをためらってはならない。海外の人事制度を本社が指示するなど硬直的な企業が日本には多いと思う。インドや中国で、日本と同じ人事のやり方が通用するだろうか」
Q.発想を変えて外国の風土に合わせるべきだと。 外国からも採用。
「そうだ。Tはその手段で、Talent(才能)の外国からの採用を意味している。米国ですら主要企業は最高経営責任者(CEO)の1割以上が外国人だ。オランダだと3割、スイスでは7割を超えている。日本企業は外国人のトップも、本社にいる外国人の幹部も少ない」
「OはOvercoming(克服)。習慣が異なる外国人同士には偏見もあるだろう。この問題を乗り越える必要がある」
「Rは(鎖国中の江戸時代にオランダから入ってきた)Rangaku(蘭学)を指している。これまで国内市場に特化してきた日本企業は、当時の蘭学者が果たした世界との橋渡し役を増やすべきだ。海外留学した日本人はもちろん、日系の外国人も候補になる」
「最後のIはIntegration(融合)の深化だ。海外企業の買収を繰り返して成長してきたメキシコのセメント大手、セメックスは参考になるだろう」
「同社はメキシコ人が幹部全体の3割しかおらず、国ごとに文化の違いがあることを社員にも研修で徹底している。社内で使うのは公用語のスペイン語ではなく英語だ。買収後は90日以内にITシステムを統一し、情報を早く統一しようとしている」
Q.日本にも多くのグローバル企業がある。
「私は貿易、資本、情報、人材などの面で、各国がどこまで世界と交流しているのかを分析している。貿易で見ると、日本は主要125カ国中122位だ」
「特にサービスの輸入の面で、経済規模の割には世界に開けていない。貿易に限らず、日本は外に向かうグローバル化に比べ、外から来るものを受け入れるグローバル化に弱いという結果が出ている」
「世界のグローバル化はあまり進んでいない。だが、日本は他の国と比べても遅れているといわざるを得ない。海外企業の買収を進めている時期だけに、日本の人々にこの結果を伝えると誰もが驚く。だからこそ、視点をがらりと変える必要があると思うのだ」
パンカジ・ゲマワット氏 IESEビジネス・スクール教授
インド出身。16歳で米ハーバード大に入学した。博士号を取得して米大手コンサルタントのマッキンゼーに勤務したが、経営戦略論の泰斗、マイケル・ポーター教授の誘いで経営大学院の教員としてハーバード大に復帰した。1991年には史上最年少の31歳で同大学院の教授に就任し、話題になった。
同書では通話に占める国際電話の比率、大学生に占める外国人の比率、海外投資比率などを集計し、グローバル化が一般に思われているほど簡単に進まないという仮設を打ち出した。世界の企業経営にも影響を与えている。
現在はスペインのIESEビジネス・スクール教授。著述活動のほか、世界の企業や政府にグローバル化についての助言をしている。52歳。
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